「あなたは80億人のうち、誰として生まれるだろう?」
最近、「80億分の1」というウェブのゲームを遊びました。生まれる国をランダムに決めて、その人の一生を、0歳から最期まで見届けるゲームです。国連や世界銀行、WHOなどの統計をもとに作られています。
遊び終わって、しばらく考え込んでしまいました。
この記事では、ゲームの中で生きた2つの人生を紹介します。そのうえで、世界銀行の統計で「日本に生まれた」ことの意味を確かめ、お金と生き方について持ち帰ったことを書きます。
※ゲームの物語は、統計をもとにしたフィクションです。画面は「80億分の1(1in8b.life)」より。
1人目:バングラデシュの農村に生まれた女性
最初に生まれたのは、バングラデシュの農村の、暮らしに余裕のない家庭でした。女性です。
- 最終学歴は中学校
- 子どものころの夢はデザイナー
- 最後の仕事は、農産物流通業の社長
- 夫と52年をともにし、子ども3人、孫やひ孫にも恵まれた
- 79歳で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)で亡くなる
暮らしに余裕のない家庭から、会社の社長になった人生でした。
いちばん印象に残ったのは、年をとってから、子どもや孫たちが彼女の面倒をみてくれたことです。
2人目:アンゴラの農村に生まれた男性
2回目は、アンゴラでした。正直に言うと、どこにある国かもすぐには答えられませんでした(アフリカの南西部、大西洋に面した国です)。
- 農村の、ごく普通の家庭に生まれる
- 最終学歴は小学校
- 牧畜業者として35年働く
- 妻と28年連れ添い、子ども8人を育てる
- いちばん幸せだった年は22歳
- 49歳で、心筋梗塞などの心臓の病気で亡くなる
- 遺した財産は、日本の物価に直してマイナス3万円
49歳。
私はいま52歳です。ゲームの中の彼より、もう3年長く生きていることになります。
35年働いて、遺した財産はマイナス。私は43歳から資産形成を始めて、9年で約4,900万円になりました。
この差は、私の努力の差でしょうか。
日本に生まれる確率は、約190人に1人
ゲームでは、生まれる国は「その国で1年に生まれる赤ちゃんの数」の割合で決まります(人口の割合で決める方法も選べます)。
世界銀行の統計(2024〜2025年)で計算してみました。
| 1年に生まれる赤ちゃん(推計) | 世界に占める割合 | |
|---|---|---|
| 世界 | 約1億3,400万人 | 100% |
| 高所得国(豊かな国)全体 | 約1,260万人 | 約9% |
| 日本 | 約70万人 | 約0.5% |
日本に生まれるのは、およそ190人に1人。豊かな国全体に広げても、11人に1人です。
私が日本に生まれたのは、私が選んだことではありません。
数字で見る「スタート地点」の違い
ゲームの中の2人が生まれた国と、日本を並べてみます(世界銀行の統計)。
| 日本 | バングラデシュ | アンゴラ | |
|---|---|---|---|
| 平均寿命(女性) | 87.1歳 | 76.7歳 | 67.3歳 |
| 平均寿命(男性) | 81.1歳 | 73.3歳 | 62.3歳 |
| 5歳までに亡くなる子ども(1,000人あたり) | 2.4人 | 30.5人 | 49人 |
| 1人あたりの国内総生産(ドル) | 約3万6,000 | 約2,600 | 約3,100 |
| 銀行などの口座を持つ人(15歳以上) | 98.5% | 43.3% | ― |
| 医療費のうち自分で払う割合 | 12% | 79% | 33% |
| 大学などに進む割合(総就学率) | 64% | 24% | 10% |
アンゴラでは、5歳までに20人に1人の子どもが亡くなります。日本は、約400人に1人です。
日本に生まれただけで、お金の面でこれだけ有利だった
表を見ていて気づいたのは、私の資産形成は、生まれた国の制度に支えられていたということです。
1. 口座があり、少額から世界中に投資できる
日本では、15歳以上のほぼ全員(98.5%)が銀行などの口座を持っています。バングラデシュでは半分以下です。
私は新NISAのつみたて投資枠で、毎月10万円を投資しています。その利益には税金がかかりません。円で、少額から、世界中の会社の株を買えます。
これは、口座があり、証券会社があり、国が税金のかからない仕組みを用意してくれているからできることです。
→ NISAの始め方|51歳の初心者が実際にやった3ステップ
2. 病気になっても、資産が崩れにくい
バングラデシュでは、医療費の約8割を自分で払っています。日本は国民皆保険があり、自分で払うのは約1割です。
大きな病気をしても、積み上げた資産を一度に失わずにすむ。これも、資産形成の土台です。
3. 年金という「仕組み」がある
日本は、すべての人が公的年金に加入する「国民皆年金」の国です。老後の暮らしの柱を、国の仕組みが支えています。
私はそのうえに、iDeCoで月2万円を積み立てています。
それでも、「お金が残らない=不幸」ではなかった
ここまで書いて、ひとつ立ち止まりました。
アンゴラの彼は、財産を残せませんでした。でも、妻と28年連れ添い、8人の子どもを育てました。いちばん幸せだった年は22歳です。
バングラデシュの彼女は、年をとってから子どもや孫たちに面倒をみてもらいました。
経済的には厳しい国でも、家族や地域のつながりが、暮らしを支える力になっていた。2つの人生を見て、いちばん心に残ったのはこのことでした。
日本では、その役割の多くを、年金や保険などの「仕組み」が担っています。だから私たちは、家族や地域に頼らなくても、お金で老後に備えることができます。
でもそれは、裏を返せば、つながりを手放しても暮らせてしまうということでもあります。
お金は、つながりの代わりにはなっても、つながりそのものにはなりません。
日本の中にも、生まれた家庭による差はある
ひとつ付け加えておきます。
「日本に生まれたから、みんな恵まれている」とは思っていません。日本の中にも、生まれた家庭や地域による差はあります。いわゆる「親ガチャ」です。
ただ、世界全体から見れば、日本は銀行口座も、税金のかからない投資の仕組みも、国民皆保険も、だれでも使えるスタート地点にいます。
自分で選べなかったことは変えられません。でも、目の前にある制度を使うかどうかは、自分で選べます。
生まれた国の幸運を、どう使うか(私の場合)
最後に、このゲームを遊んで決めたことを書きます。
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使える制度は、使い切る NISAもiDeCoも、世界の多くの国にはない仕組みです。「難しそう」で使わずにいるのは、当たりくじを引き出しにしまったままにするのと同じだと思いました。
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世界に投資する 私の資産の約45%は、外貨建ての株や投資信託です。世界の成長に、少しずつ参加し続けたいと思います。
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つながりも、資産だと考える お金のことばかり考えていると、家族や友人との時間を後回しにしがちです。2人の人生は、それを見直すきっかけになりました。
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経験と知恵を、次に残す いまの私には、次の世代に何かを残している実感はありません。でも、このブログに、自分がしてきたことや失敗したことを書き残すことはできます。それが、日本に生まれた幸運を、少しだけ次に回す方法だと思っています。
まとめ
- ゲーム「80億分の1」で、バングラデシュの女性(79歳)とアンゴラの男性(49歳)の人生を生きた
- 日本に生まれる確率は約190人に1人。豊かな国全体でも11人に1人
- 口座、税金のかからない投資、国民皆保険、国民皆年金。私の資産形成は、生まれた国の制度に支えられていた
- それでも、お金が残らないことと、幸せでないことは別。家族や地域のつながりも、暮らしを支える力になる
- 生まれる国は選べない。でも、生まれた国で何を使い、何を大切にするかは選べる
あなたは、80億人のうち、誰として生まれるでしょうか。一度遊んでみると、いまの自分の場所が少し違って見えるかもしれません。
出典
- 80億分の1(1in8b.life):ゲームの画面と物語(統計をもとにしたフィクション)
- 世界銀行 World Development Indicators:平均寿命・5歳未満死亡率(2024年)、1人あたり国内総生産(2025年)、口座保有率(2024年)、医療費の自己負担割合(2023年)、高等教育の総就学率、人口と出生率(出生数は人口×出生率で推計)
※アンゴラの口座保有率は、最新の公表値が2014年のため表に載せていません。